お米と野菜を物々交換。(JICA事業)
JICA(独立行政法人 国際協力機構)事業
「ベトナム国 持続可能な有機農業一貫体制構築のための案件化調査」
事業開始から3回目、今回は9月20日~30日、10日間の渡航です。今回は有機農家であり、姶良有機部会会長の今村君雄さん、鹿児島県有機農業協会検査員、鹿児島大学名誉教授・農学博士でもある岩元泉先生、地球畑からは渡瀬事業部長、EC事業部からは重野、組合本部より農地賃借や雇用関連調査員として上田総務部長も同行です。
今回訪問した農場は5か所、HACCP認証加工場1か所、物流会社調査1社、販売店5か所
農場① ・国際認証を網羅する大規模農場「EverydayOrganic」 1農業法人で1,000ha以上もの圃場を有するEverydayOrganic。 野菜、果物、畜産、水産のUSDA認証、EU認証、JAS認証の3つを取得しており、ベトナム国内でも肉や水産物のEU認証を持っているのはココだけとか。 畜産も含め循環型農業を確立。現在は高価で売れるドリアンやドラゴンフルーツ、バナナやグァバが主な主力商品。 インタビューの中で、畑の周りに在住している少数民族より、以前は慣行農業で風に乗って農薬が飛んできていたが、EverydayOrganicさんになってからは風や空気がきれいになったと感謝されたそう。 有機農業は除草が大変だが、雑草の花でミツバチが集まるようになり、養蜂をするつもりは無かったがおいしい蜂蜜が副産物になったという素敵な話も。 社長自ら、自分は農業知識がまだまだ不足していると農業大学で勉強をしていらっしゃいます。一時休止している通販の再開やコロナの影響で閉店してしまった実店舗再開が課題。
農場② ・クムガー人民委員会紹介の、長寿野菜「アスパラ」「パッションフルーツ」農家団体 収穫できるまで日本では最低2年はかかるといわれるアスパラ。アメリカからの輸入種を育苗し、6ヶ月周期でアスパラを収穫。近隣のコホ族やエディ族を雇用し、地域に根付いた有機的農業をしている。
農場③ ・農協団体の団体長を務めるMAIさん(前回訪問したKATAFARMドゥク社長の義母)の大規模果樹園「EcoDak」 2016年に創業、ベトナムの特産品認証「OCOP(オコップ)」を取得し、胡麻、小豆、アボカド、ドリアン、ザボン、ジャックフルーツ、マカダミアナッツ、マンゴー、バナナ、香酸柑橘(レモン等)、さつまいも、養蚕と、連携農家を含めると多品種。 ユネスコ認定地域でもあるダクノン省内の高山部にあり火山土質で土が固め。 これまで日本の有機農業を知り、土作りが大事、種苗も大事、周りの環境への影響も考える農業だと語って頂いた様子が優しいながらも熱心さを感じた。
農場④ ・日本向け輸出さつまいも生産農業法人「GREEN FARM」 輸出用さつまいもを80haも所有している新規大規模農業法人。 さつまいも生産は2年目だが、日本のある企業からマメに栽培指導をしてもらい、昨年は十数トンは輸出。 圃場の前作はゴムの木畑だったため、比較的土づくりは薬剤汚染の心配は無かったそう。(ゴム生産は農薬や薬剤を必要としないため)有機的肥料や微生物を入れ、プラウ耕起をし、ベトナムの農業では珍しい大型のトラクターや散水機も使い、土作りを大事にしていた。 収穫サイクルは2年間で3回。輸出用なので作付量より多めに栽培するようにしているそう。
農場⑤ ・日本の技能実習卒業の米農家 高知県で7年間ニラの栽培研修をしてきたミンさん。 この水田では年2回の収穫。ベトナム国は長粒種が一般的で、炊くと茹でた豆のような香りがする香り米が有名。おいしいお米=よい香りがするという認識。 生産に関わる機械のレンタル代や手伝い人の賃金はなんとお米で支払っているとか。 さらに田舎の米農家は資金を多く持っていないため、肥料代などの費用は地域の人に借り、収穫したお米で返す。野菜が欲しければお米で物々交換。 クボタ、ヤンマー、イセキなど日本でも有名な農機具もあるが、耕耘や肥料、収穫までの段階的な知識が不足しており、何のための作業なのか、先が見えないと労働者が辞めていくのが課題。
①オーガニックショップ「FujiMart」 住友商事系列のスーパーマーケットでベトナム国内に約50店舗を構える。日本産の食品やVietGAP(ベトナム国内の認証)製品、有機食品の品ぞろえも豊富。 一般的な価格(露店で販売している価格)帯の2倍程度の相場で、例えばニラ1パック100g入りで37.2円、ツルムラサキ1パック100g入りで14.1円、オクラは1パック100g入りで56.4円、人参は100gあたり15.2円。現地生産のお米は190.8円/kg、有機黒米(EU認証&USDA認証)は570円/kg。 ※レート:0.006円/1VND
②オーガニックショップ「Bactom」 ハノイに18店舗あるオーガニックスーパー。地球畑と同じような規模感で参考になった。 こちらのツルムラサキは1パック100g入りで24円とFujiMart比べ高いものもあればオクラ1パック100g入りで33円と安いものも。
③夜の青果市場 日本の青果市場とは違い、ベトナムの農業が盛んなバンメトートの青果市場は夜8時頃から始まる。夜までに農場からの野菜が、主にバイク、小型車で集まり、出店スペース内でロットごとにパッキング(大袋に5kg詰めなど)し、受注したものはバイヤーが配送したり物流担当人として雇われた人がバイクで配達。深夜から早朝にかけて各地へ配送される。暑い国なので気温の低い時間帯に常温輸送、市場のブースは家族経営や親戚経営がほとんど。
④オーガニックショップ「Nhà Mình Fresh Foods & Seasonings」 自然食品や認証ものの生鮮食品を扱うスーパーマーケット。生鮮食品全般、調味料や地元のナッツ類、韓国や日本の輸入食品やお惣菜なども並ぶ。 偶然買い物をしていた消費者へのインタビューすることができた。30代の女性、販売業を営む方からは、ここは一般価格より3倍程高いが質の良い食品が置いてあるためよく買いに来る。ここを知るまでは野菜の味など興味がなかったが、ここの野菜は味が良くてやわらかくておいしいと知った。
⑤オーガニックショップ「BMT GREEN FOODS」 自然食品や健康食品を取り扱い、ヴィーガン向けのレストランも運営するお店。小さい店舗だが奥行きがあり、近所に姉妹店あり。 レストランは健康志向や僧や仏教の祭日などに利用するお客がいる。20代の女性がオーナー。 どこか地球畑カフェを思わせる木や緑あふれる店内デザイン。日替わりメニューや本日の野菜産地などの掲示もあった。
HACCP認証加工場 2022年に開始した乾燥バナナにチョコがけをしたお菓子の製造工場、HACCP認証を取得。 製造工程に特に変わった点は無いが、原材料のバナナは付近の少数民族が昔から栽培している無農薬栽培のもので、日本で食べるバナナと違い自然な甘さ、渋みやえぐみなどもなし。 バナナカット時に出る端材はバナナリキュールとしても再活用。SNSやShopeeに出品。アフィリエイターは200人。 工場は6人体制で、計10人の小規模農協グループ(Coop)で運営している。
有機認証について
ベトナム国では認証事情についてはおおまかに2パターンのようだ。 ベトナム国内向けのローカル認証(特産品認証やベトギャップ認証)をすべて取得するか、国際的な認証(EU認証、USDA認証、JAS認証)を取得するか。 輸出志向であると国際的な有機認証が必要であるが、ベトナム国内向けには現段階では国際的有機認証までは求められていないようだった。 生産者が海外輸出も考慮した販売計画をするのであれば、国際的な有機認証取得を視野に入れることが必要。 ベトナム国内向けであれば、国際的な有機認証取得は必須はなく、消費者の有機農産物への意識の周知レベル、認証の意義の浸透、認証マークの信頼度の醸成などを見て、ローカル認証から着手し、段階を経て国際的有機認証取得を目指すほうが良いように思われた。 また、生産者側が農企業であるのか、個別農家のグループであるのかによって、有機認証取得の方法が異なってくる。個別農家グループの場合には、従業員全員に浸透させる前提で、有機認証の意義から、有機農業の技術、認証取得の手続き方法、管理・記帳などについての学習が必要となる。
長期間の渡航となり、濃密な調査内容を持ち帰ることができた第3回渡航。
11月末にはオーガニックフェスタを含む数日間、ベトナム側から農業の有識者を招待し、日本の有機農業、かごしま有機生産組合・地球畑の有機農業の取り組みを視察して頂く予定です。
ベトナムのこれからの有機農業普及に、良い波及効果が提供できることを願って。